「やっぱり人前で歌うのは、演奏するのはめちゃくちゃ楽しい」
ウルフルズと迎えた最高の年末年始!【3DAYS初日レポート】
トータス松本(vo&g)仕切りの12/30フェスティバルホール[大阪]
『ライブ2020-2021 〜とにかく歌えれば。〜』
未曽有のコロナ禍に襲われた’20年。ウルフルズは、“少しでもファンに元気と笑顔を届けたい”という想いから、5月には『タタカエブリバディ(demo ver.)』をYouTubeにて無償公開、『サンシャインじゃない?』の配信リリース、関連したショートムービーをYouTubeにて公開。7~8月には2カ月連続で無観客ライブを配信、10月には大阪で野外フェス『OSAKA GENKi PARK』の初日のトリを務め、そのパワフルなパフォーマンスでオーディエンスを鼓舞するなど、持ち前のバイタリティとユーモアで激動の1年を駆け抜けた。そんな彼らが、約1年半ぶりの有観客での単独公演となった『ウルフルズ ライブ2020-2021』を年末年始に開催。’20年12月30日・31日はフェスティバルホール[大阪]、’21年1月5日は中野サンプラザ[東京]にて行われ、メンバーがそれぞれ1公演ずつライブのタイトルやセットリストを考案するというスペシャルなライブとなった。そこで、同3公演全てのライブレポートを実施。まずは12月30日・フェスティバルホールで行われた3DAYS初日、トータス松本(vo&g)が名付けた『ウルフルズ ライブ2020-2021 〜とにかく歌えれば。〜』、 “ノー・ウルフルズ、ノー・ライフ”な一夜をお届けします!
フェスティバルホールのステージには、わいもくんやホンキーマンといった歴代のマスコットキャラクターが居並ぶ巨大なセットが設置され、開演を今か今かと待ちわびるオーディエンスをお出迎え。見るからにスペシャルな大舞台へとオンタイムで現れたメンバーによる分厚いバンドサウンドで、初っぱなに披露したのは『ウルフルズ A・A・Pのテーマ』! 「大阪! 久しぶり~!!」と感慨深げなトータス松本(vo&g)が、気持ちよさそうにその歌声を聴かせ、ボルテージの上昇と寄り添うような手拍子で一緒にライブを作っていくオーディエンス。サビではお決まりのポーズもバッチリキメて、桜井秀俊(g・真心ブラザーズ)、浦清英(key)というおなじみのゲストミュージシャンを迎えた盤石のグルーヴが躍動していく。割れんばかりの拍手を浴びた最高のオープニングから、『続けるズのテーマ』でもジョンB(b)とサンコンJr.(ds)のタイトなリズム×トータス松本のブルースハープがほえ、極上のナニワンファンクをフェスティバルホールに響かせる。きらめく照明と立ち上がるスモークをかいくぐり始まった『ヤング ソウル ダイナマイト』では、ステージを横断しながらソウルフルに歌い上げるトータス松本を、チームウルフルズの練り上げられた音と光がしっかりと支えていく。
ステージに向かって手を振るオーディエンスに深々と頭を下げたかと思えば一転、『ひとつふたつ』では照明もテンポもグッと落とした渋みのあるブルースで会場を引き込む。今までなら大合唱が起こったであろうサビでは、オーディエンスの心の声を代弁するかのようにメンバーが精いっぱい声を張り上げ、夕暮れのような照明と共にその心意気が沁みてくる。「ありがとう、ありがとう」と何度も声にするトータス松本が、「おい どんな感じ? さあ元気出して行こうや」と語り掛けるように『タタカエブリバディ』を歌い出し、「Everything's Gonna Be Alright、心の声で!」と叫ぶ。やっぱり生で見るウルフルズは最高だと、激動の'20年の終わりに再確認できたことが心底うれしい。「どうもありがとう、ウルフルズです!」というトータス松本の挨拶に長い拍手で応えるオーディエンスに、長年かけて築き上げた絆をヒシヒシと感じる。
「今日、無事にこうして開催できて、みんな元気に会えて。普通のライブの100倍...は言い過ぎよね?(笑) 何倍も何倍もうれしいです。最後までよろしくお願いします!」(トータス松本)
「ホントに...やれて良かったです。昨日までドキドキしてましたから」(ジョンB)
「ライブをできる楽しさをかみしめながら5曲やりましたけど、多分みんな同じ気持ちなのかなと」(サンコンJr.)
「そして、ギターはいつも通り真心ブラザーズからお借りしました(笑)、桜井秀俊! そして、キーボードもいつも通り浦清英! 本当にリハーサルスタジオに集まるとホッとするのよ。俺らが全力で演奏して歌いますので、その間は何もかも忘れて楽しんでいってもらえたらと思います。ほな、続きいこか!」(トータス松本)
トータス松本がアコースティックギターをかき鳴らした『きみだけを』では、どこかノスタルジックで甘酸っぱいラブソングに心がじんわり温かくなる。続く『ひと ヒト 人』でも、心地よさそうに身体を揺らすオーディエンス。そのまま深いブルーとスポットライトに照らされて、もはやウルフルズのオリジナルと言えるほどのライブ鉄板となった、サム・クックの『ワンダフル・ワールド』の日本語カバーを。ソウルレジェンドの名曲の世界をじっくり味わいながら、それを完全に自分のモノにするウルフルズに、"こんなバンド、他にはいない"という想いを新たにさせられる。そして、トータス松本の歌声が深く大きくフェスティバルホールに広がっていくイントロから、サンコンJr.の繰り出すビートが高まる鼓動のように身体に伝わる『サムライソウル』へ。音楽を心だけでなく身体で感じるのはまさにライブならではの体験だと改めて感じる。
「ありがとう。さっきからサイリウムを振ってる気の早い人がいたけど、ホンマはここで俺が言うまで待ってほしかってん(笑)。もう俺らが出てきた瞬間に振ってたもんね(笑)」と場を沸かせ、話題はトータス松本が楽曲提供をした伊藤蘭のライブを見に行った際の話に。「昔、"全国キャンディーズ連盟"っていうのがあって、その"全キャン連"の人たちが本当は"蘭ちゃーん!"って言いたいはずなのに、手もちぎれんばかりにサイリウムを振ってるのを見て感動したんよね。だから、ここで"ポッキンタイム"を(笑)」とトータス松本が促すと、観客も一斉にサイリウムを折り曲げ、会場の各所に次々と光がともっていく。
「ホールでライブをやるのって『人生』('17)のツアー以来かもしれん。久しぶりのホールのステージなんで、存分に自分の声がこの空間に響き渡るのを楽しんでおります。じゃあ次の曲、いってみよか!」(トータス松本)
桜井秀俊のギターがいざなった『サンシャインじゃない?』では、ネオンカラーのサイリウムが場内をサイケに彩り、照明が落とされるとその絶景にトータス松本も思わず「うお! すげぇ」と声を上げる。哀愁漂うミドルチューン『生きてく』をエモーショナルに熱唱した後は、一旦舞台をはけるトータス松本。インストコーナーでは浦清英がハモンドをうならせけん引するバーケイズの『Soul Finger』のカバーでつなぎ、奇抜な衣装に着替えたトータス松本が舞い戻ったときには会場が一気に沸点へ! 『バカサバイバー』のサビで客席のサイリウムがキレキレにスイングする光景も最高で、「心の声はちゃんと俺に届いてるからな。大阪の、大阪による、大阪のための!」(トータス松本)とブチ上げた『大阪ストラット』といい、生涯で1~2曲書けたら上出来のキラーチューンが次から次へと押し寄せるウルフルズはやっぱりすごい。間奏のコール&レスポンスでは、「あえていつも通りやってます。こういう時代になって、いかに我々ウルフルズは人に歌ってもらう曲が多いか分かりました(笑)。でも、それをやめたらウルフルズじゃないから」と叫ぶトータス松本に会場も大興奮。「やっぱり『大阪ストラット』は大阪で歌いたいもんやな」(トータス松本)と漏らした後は、スペーシーなシンセから『センチメンタルフィーバー 〜あなたが好きだから〜』へ。ジョンBも甘い歌声でボーカルを取り、異色のテクノサウンドで魅せていく。
「何か知らんけど、'20年は『それが答えだ!』と歌いたい気分でした。そう言いたいときってあるやん? 歌ってくれるか大阪!? 心で叫んでくれ!」(トータス松本)
誰もが正解を知らないアフターコロナの世界だからこそ、それぞれの答えが、ウルフルズの答え=音楽が聴きたい。会場が一体となって心の声をステージへと届け、演奏後も一向に拍手が収まらない。
「何となく今までやってきたこととは勝手が違うこのライブ、だけどやっぱり人前で歌うのは、演奏するのはめちゃくちゃ楽しいです。できることを力いっぱいやってさ、明るい未来を考えて、いつもしっかり気持ちを持って、みんな楽しく生きていってくださいね。俺らも頑張るから」(トータス松本)
おのずと涙がこみ上げてくるような言葉から、彼がライブのサブタイトルに"とにかく歌えれば"と名付けた心境が伺える。それを受けての『バンザイ〜好きでよかった〜』が胸に刺さらないわけがない。そして、「'21年はデビュー30周年のプレ・イヤーです。ますます面白いことを考えて飛ばしていこうと思ってるからよろしく!」(トータス松本)とのうれしい宣言を経て、やっぱりこの曲を聴かずにライブは終われない!? トドメの『ガッツだぜ!!』では会場全体がハッピーにまみれて盛り上がる!
鳴り止むことのない拍手に呼び戻されたアンコールでは、「"あれ、もう終わりか?"みたいな感じが正直あって、時間を見たらやっぱりだいぶ早いんですよ(それでも2時間やってます)。でも、曲数はいつも通りやから、今までがいかにムダ話が多かったかやね(笑)」と笑うトータス松本。「せっかくやからドラマの話をしてくださいよ」というジョンBの振りから、トータス松本が自称「ろくでなしのお父さんの役(笑)」で出演中のNHK連続テレビ小説『おちょやん』の話に。「今回は現代劇じゃないから余計にドラマに入り込める。いつも着てそうな服で出てると"松本くん"に見えるから(笑)」とはサンコンJr.評。「ちなみに松本くんのおかんは何か言うてるんですか?」というジョンBの問いには、「1週目を見て"テレビを通して元気な姿を見られてお母さんもうれしいです"ってLINEが来て。その後は一切何も言うてこーへん。多分、"娘に何てことするねん!"ってマジで怒ってると思う(笑)」(トータス松本)と話すなど裏話もたっぷり。そして最後は、「今は最高の気分です!」(トータス松本)と、この日のテーマソングとも言える『笑えれば』を。コロナ禍で一変した日常に、また異なる意味合いや深さで背中を押してくれるシンプルで力強いメッセージ。こんな時代だからこそ、ウルフルズの歌が必要だ。「ありがとう大阪!」(トータス松本)と何度も感謝を告げた3DAYS初日が、幸福な確信を道連れにこうして幕を閉じた。
Text by 奥"ボウイ"昌史
Photo by 渡邉一生(SLOT PHOTOGRAPHIC)
Supported by ぴあ関西版WEB
Set List
久々の有観客、そしてホールでのワンマンを存分に堪能した熱いライブ
『ウルフルズ ライブ2020-2021 〜とにかく歌えれば。〜』
12月30日(水) at フェスティバルホール
01. ウルフルズ A・A・Pのテーマ
02. 続けるズのテーマ
03. ヤング ソウル ダイナマイト
04. ひとつふたつ
05. タタカエブリバディ
06. きみだけを
07. ひと ヒト 人
08. ワンダフル・ワールド
09. サムライソウル
10. サンシャインじゃない?
11. 生きてく
12. Soul Finger
13. バカサバイバー
14. 大阪ストラット
15. センチメンタルフィーバー 〜あなたが好きだから〜
16. それが答えだ!
17. バンザイ〜好きでよかった〜
18. ガッツだぜ!!
ENCORE
19. 笑えれば