ウルフルズ 30周年ツアー 2022-2023 ~楽しいお仕事演奏会~

LIVE REPORT



【ライブレポート】エンタテインメントでもあり、ドキュメントでもあった『ウルフルズ 30周年ツアー 2022-2023』ファイナル公演



『ウルフルズ 30周年ツアー 2022-2023〜楽しいお仕事演奏会〜』が、2023年1月13日、東京・中野サンプラザホールで、ファイナルを迎えた。
2022年11月9日に埼玉・三郷市文化会館大ホールから始まった、全14本のこのツアーは、コロナ禍以降で初めてウルフルズが実現できた、本当に久々の、全国規模のツアーだった。
また、札幌から福岡まで各地を網羅しつつ、千葉県君津市、静岡県三島市や富山県小矢部市などの、普段なかなか行けない場所にも出向いたツアーでもあった。




そして、デビュー30周年を記念して行って来たさまざまなアクションの、最後を飾るのがこのツアーなので、それらを総括する、という意味合いもあった。
つまり、過去のレパ−トリーから10曲づつ選んでセルフカバーした30周年記念アルバム3作=『ウル盤』『フル盤』『ズ盤』の30曲にも、その次にリリースしたニューアルバム『楽しいお仕事愛好会』(長いので以下『お仕事』)の12曲にも、対応した内容でなければならない、という。そこで、ウルフルズはどうしたのか。では書いていきます。




まずセットリストは、本編15曲、アンコール1曲、ダブルアンコール2曲の合計18曲。
その中の13曲目は、『楽しいお仕事愛好会』(以下『お仕事』)収録の「続けるズのテーマ」で始まり、過去の代表曲を6曲つなげて、最後に「続けるズのテーマ」に戻って終わるメドレーである。




できる限り多くの曲を演奏したいが、3時間半とかの長尺ライブにするのは、全国のホールを回るツアーでは、物理的に不可能。ならば、ということで、メドレーにした、と推測する。
そして。「続けるズのテーマ」以外の『お仕事』収録の11曲はすべて、メドレー以外で、フル尺で演奏された。『ウル盤』『フル盤』『ズ盤』3作の収録曲からは、メドレー外もメドレー内も含めて8曲をプレイ。
あと、メドレー内には、その3作には入っていないがウルフルズの歴史上重要な2曲である「大阪ストラット」と「ウルフルズA・A・Pのテーマ」も組み込まれた。




最初は「ツーべーコーベー」「アイズ」と、『お仕事』からの2曲でスタート。挨拶のMCをはさんで「歌 V」、そして「よんでコールミー」「サンシャインじゃない?」と、また『お仕事』から2曲、MCを入れてから「きみんちのイヌ」と「笑えれば」......と、前半は、『お仕事』の曲と過去の曲を混ぜていく構成。




中盤は、「年齢不詳の妙な女 V」を経て「ゾウはネズミ色」「踊れ」「グッゴー!」と『お仕事』の曲を3曲固め撃ちしてから、いったんトータスがステージから去る。
そして、4人で「TIGHTEN UP〜しまっていこう〜」(1998年5月にシングル「まかせなさい」で出した、1968年にヒットしたR&Bのスタンダード曲のカバー)で、メンバー紹介を兼ねたソロ回しでつなぎ、衣装替えをしたトータスが再登場して、メドレーへ。




メドレーの後は、「それが答えだ!」とMCを経て、ニューアルバムのタイトル・チューン「楽しいお仕事愛好会」で、本編を締める。デビューからの30年を総括しつつ、「もっかいやってみる もっかいやってみるのさ 何度でも 何度でも」と未来への意志も表し、最後は「サムライソウル!ヤングソウル!ガッツでバンザイ それが答えだ! すっとばす!暴れだす!ええねんええねん笑えれば!」と過去の曲名を並べたリリックを、メンバー3人で叫ぶように歌うこの曲では、ステージ後方のビジョンに、デビューから現在までの30年間の写真が、次々と写し出された。




『お仕事』には、ジョンBをフィーチャーした沖縄民謡風楽曲「黒田の子守唄」と、サンコンJr.が歌うロックンロール「コミコミ」も収められているが、それらはアンコールで活かされた。
一度目のアンコールは、沖縄の民族衣装姿のジョンBと、かりゆしウェアのトータスが並んで、三線を弾きながら「黒田の子守唄」。ジョンBお得意の「ありがとうなぁ」が歌詞に織り込まれたこの曲が終わると、メンバー一同が去り、客席が「え、これで終わり!?」みたいな空気になる。




で、二度目のアンコールで、ラメのジャケットを着たサンコンが登場、踊り回りながら「コミコミ」を熱唱。トータスはサンコンの代わりにドラムを叩く。左手のスティックの握り方、サンコンと同じレギュラー・グリップなのが、何かいい。




という2曲で、一度バラエティ方向に振っておいた上での、本当のラストは「バンザイ〜好きでよかった〜」で、感動的に締めくくられる。というのがこのツアーの終わり方だったのだが、最終日であるこの日は、違った。



「バンザイ」を歌い終わり、本当にいい笑顔で客席を見渡したトータス、「千秋楽やし、もう1曲いこか!」と、「ええねん」を追加したのだ。
照明も客電も点けっぱなしだったし、レポを書くためにもらったセットリストにも入っていなかったし、ツアー初日の三郷でもやっていなかった。なので、本当に急遽だったのだと思う。




以上、ここまで書いてきたように、30周年の締めの活動を、自分たちにとっても、オーディエンスにとっても、いかに楽しくて、いかに充実していて、いかにやり残しのないものにするか、つまり、いかに悔いのないものにするか。それを徹底的に実行したのが、このツアーだった。




それを13本やり通して来た末にこの日があったわけで、ゆえに、メンバー+サポートメンバーのパフォーマンスも、映像や照明等の演出も含めて、極めて完成度の高い、プロフェッショナルなショウだった。が、それと同時に、毎回一緒では決してない、その瞬間その瞬間の、演者の心の動きが、生々しく表れたステージでもあった。
つまり、エンタテインメントでもあり、ドキュメントでもあった、ということだ。




特にそれが表れていたのが、この日の5曲目「サンシャインじゃない?」と6曲目「きみんちのイヌ」の間のMCで、トータスが言ったこと。
「......最終日の、何この変な空気? もう、ええわ、これで。という気持ちですよ。なんやろ......いや、これで俺らの音楽活動、終わりなわけじゃないんですよ? ますますはりきってやっていくんですよ。でも、なんかひとつ、区切りがつくような、つかへんような。と思ったら、気合いが入るような、入らへんような。なんかもう、何この気分? っていう気分でいるんですよ」




こういう、身もフタもなくあけすけなところも、ウルフルズの大きな魅力だなあ、と、観ながら改めて思った。いや、ロックとか、ロック・バンドとかいうものの、大きな魅力なのかもしれない、そもそもは。



Text:兵庫慎司
Photo:渡邉一生



<公演情報>
ウルフルズ 30周年ツアー 2022-2023 ~楽しいお仕事演奏会~
1月13日東京・中野サンプラザホール



<セットリスト>
01 ツーベーコーベー
02 アイズ
03 歌 V
04 よんでコールミー
05 サンシャインじゃない?
06 きみんちのイヌ
07 笑えれば
08 年齢不詳の妙な女 V
09 ゾウはネズミ色
10 踊れ
11 グッゴー!
12 TIGHTEN UP ~しまっていこう~
13 続けるズのテーマ
  ガッツだぜ!!
  タタカエブリバディ
  バカサバイバー
  大阪ストラット
  センチメンタルフィーバー ~あなたが好きだから~
  ウルフルズ A・A・Pのテーマ
  続けるズのテーマ
14 それが答えだ!
15 楽しいお仕事愛好会



アンコール
16 黒田の子守唄
17 コミコミ
18 バンザイ~好きでよかった~
19 ええねん(ツアーファイナル@中野公演のみ)



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出典:ぴあ(アプリ)