「ウルフルズは本当に幸せ者です」
全26曲3時間半の幸福で最高な日常
5/20(土)大阪・万博記念公園もみじ川芝生広場
『ヤッサ!2023 ええねん ええねん 笑えれば!』ライブレポート
ウルフルズが'00年より続けてきた恒例の野外ワンマンライブ『ヤッサ!』。デビュー30周年を迎えた昨年は、'18年以来4年ぶりに行われ、アニバーサリーイヤーを飾る盛大にして最高の宴となったのも記憶に新しい。そして通算18回目となった今年は、『スマドリでええねん!PRESENTS OSAKAウルフルカーニバル ウルフルズがやって来る! ヤッサ!2023 ええねん ええねん 笑えれば!』と称し、5月20日(土)大阪・万博記念公園もみじ川芝生広場にて開催。久々の復活を遂げた昨年の狂騒とはまた異なる、続いていくホームグラウンドとしての『ヤッサ!』へ。約3時間半にわたる熱いライブの記憶を閉じ込めた、レポート決定版をここにお届けします!
昨日までの雨がうそのような晴天に恵まれたもみじ川芝生広場には、巨大な虹があしらわれたセットが設置。4年ぶりの開催となった昨年の、期待感と同時にどこか緊張感を伴ったオープニングとは異なり、『ヤッサ!』が毎年行われるという幸福な日常を取り戻した今年は、場内にもリラックスしたムードが漂う。開演を知らせる『世界の国からこんにちは』のSEに合わせて大きな手拍子が出迎える間、ステージ上手からサンコンJr.(ds&cho)、下手からジョンB(b&cho)、中央からトータス松本(vo&g,harp)とメンバーが次々に登場。トータス松本が満場のオーディエンスに手を振り、ハンドマイクで「イエー!」と『バンザイ~好きでよかった~』のあのフレーズをいざ歌い出せば、それに応える大歓声と共に広場を埋め尽くす手が揺れる。
「こんな大勢が集まってくれて、天気もこんなに良くなって。しかも声出しもOK! みんな今日は楽しんで楽しんで楽しみまくって帰ってください!!」とトータス松本があおり、お次は『大阪ストラット』へ! 昨年はライブのクライマックスを飾った鉄板のナンバーを冒頭から惜しみなく連発し、その後も、武嶋聡(sax)、村上基(tp)、滝本尚史(tb)からなるヤッサホーンズの軽妙な調べに乗って現れた総勢40名のダンサーが花を添えた『明日があるさ』~『SUN SUN SUN'95』と、年に一度のどデカい祭りを初っぱなから容赦なくブチ上げていく。
「いや~すごくいい天気になってきたね(汗)。去年は曇りで、"これぐらいがええわ"ってやせ我慢で言ってたんですけど、やっぱり曇りぐらいがええかもしれん(笑)。でも、雨が降るより100倍いいです。ウルフルズは去年30周年イヤーでね、大阪は特に盛り上がってくれて、たまらなくうれしかったです。本当にありがとう! 今日も楽しんでください。じゃあ、去年出したアルバムからやっていこうかな」(トータス松本)
ここからは、昨年11月にリリースした最新アルバム『楽しいお仕事愛好会』('22)の収録曲を立て続けに披露。『ツーベーコーベー』では、浦清英(key)、真心ブラザーズの桜井秀俊(g)と菅原龍平(g)という気心知れたサポート陣の見せ場もふんだんに盛り込み、ブギーなロックンロールをぶちかます! その後も、テレビCM曲『アイズ』や、ダスキン『無理なくつづく篇』のテレビCM曲『グッゴー!』と、お茶の間でも耳なじみのあるタイアップ曲で場をにぎわせたかと思えば、トータス松本とジョンBが三線、桜井はラップスチールギターにスイッチ。トータス松本のカバーソロアルバム『TRAVELLER』('03)収録のレア曲『Yahho!』から、ジョンBがリードボーカルを担当する『黒田の子守唄』とリレーし、オキナワン・テイストでもほっこり和ませた。
MCでは、「いや~すごいですねやっぱり、センターの重圧って言うんですか?」と語るジョンBに、「そんなんないやろ(笑)。昨日の現地リハーサルでは、うれしそうな顔してそこのセットの上に立ってたんですよ。すかさずiPhoneで撮りましたけど(笑)。桜井くんと2人で満面の笑み」とトータス松本がいじり、「ここは本来ただの芝生広場やから、舞台を設営するところから『ヤッサ!』は始まるんですよ。みんなのおかげやわ、こんなことがずっと続けられてるのは。ありがたいわ」と続け、ファンに感謝を述べる。"旅の一座"風の和装の衣装にも触れつつ、「次は『ヤッサ!』ですごく人気がある曲なんで、今回も外せないなと。ここのシチュエーションに合ってるんかな?」と『僕の人生の今は何章目ぐらいだろう』を情感たっぷりに歌い上げる。
"30周年で30曲"をテーマにした昨年とはガラッとセットリストが変えられた今年の公演だったが、同曲は引き続き演奏された数少ない一曲。桜井のラップスチールギターや浦のハモンドオルガンが、楽曲の持つ哀愁をいっそう際立たせる。そのメロディに身を任せ、心地良さそうに体を揺らす観客。この場所で聴くことに意義とうま味があることを、改めて思い知る選曲だ。そのままアコースティックギターで映画『くれなずめ』主題歌『ゾウはネズミ色』をかき鳴らし、「『ゾウはネズミ色』は、実は今から歌う曲のセルフアンサーソングなんです」と思いを吐露するトータス松本。それが『それが答えだ!』で、つい先日テレビ番組『まつもtoなかい』で、子どもの頃からウルフルズの大ファンである女優・安藤サクラが、番組内で"一番好きな曲"と公言した一曲。番組で彼女と対談したトータス松本が、「今カンヌにいる安藤サクラに捧げます!」と絶叫し、ヤッサダンサーズもろともエネルギッシュにパフォーマンス! これぞ『ヤッサ!』な景色に会場も大いに盛り上がる。
「ありがとう! これは太陽の直射日光だけじゃないな、みんなの熱意が差してきてるね。頑張れ、もっと歌えと、あおってきてる(笑)。ずーっと何十年も走り続けてきたような気がするんですよ。ホンマにずーっと楽しかった。いろんなことがあってもしんどいを楽しさが全部覆っていく。ウルフルズは本当に幸せ者です。だから去年、30周年を記念して歌を作っといた方がいいやろと思って。"仕事が楽しくない"じゃなくて、"楽しく仕事をする"という考え方。そんな感じでここまでやってきたと思うんで、その気持ちを歌にしました」(トータス松本)
最新アルバムの表題曲『楽しいお仕事愛好会』は、ウルフルズの紆余曲折のバンド人生を、30年を超えるキャリアで得た処世術とも言える視点で綴られている。そんなウルフルズと一緒に生きてきた人にはたまらないフレーズ=歴代の代表曲名も随所に織り込まれ、"ええねん ええねん 笑えれば"という一節は、今年の『ヤッサ!』のサブタイトルでもある。終始、グッドヴァイブな空気が流れた前半戦を締めくくるにふさわしい一曲となった。
インターバルでは昨年に引き続き、ウルフルズに猛烈に影響されているが決してそれを認めない"ウルトラズ"(笑)に扮する、ジャルジャルのコント映像がスクリーンで上映。新人発掘オーディションのプロデューサーを前に、『やったー』『そりゃそうや』『ガッツだそう』と、相変わらずウルフルズそっくりの曲ばかり歌おうとするトースター松林をはじめ、メンバーのジッパー・ジャンパー、ホンコン・チュニジアは、ウルフルズ・クイズに全問正解しながら大好きであることを一向に認めない。ジッパー・ジャンパーがトータス松本とバーで偶然会ったエピソードも飛び出し(笑)、最後は『ダッサ!2023』の開催を目指し意気込むなど、今年も笑いの絶えない転換タイムだった。
後半戦は、ウルフルズ流80sなダンスナンバー『センチメンタルフィーバー ~あなたが好きだから~』からスタート。衣装もチェンジし、ヤッサダンサーズ総出でいきなり沸かせ、ドライブするギターが導く『事件だッ!』では、ゴージャスなホーンとタイトなリズムに心も体も躍る。「今年もジャルジャルありがとう! ジッパー・ジャンパーとバーで会ったのは本当です(笑)。後半も楽しんでください!」と先ほどのVTRにも触れつつトータス松本が感謝を伝え、メンバー3人の飾らないボーカルが染みるブルージーな『ひとつふたつ』へ。そして、歌い出しから神懸っていたのが『笑えれば』だ。時代が流れ色あせるどころかより深く、優しく、胸を貫くメッセージ。時間が熟成していく名曲をライブで聴くたびに、ウルフルズの音楽が今でも多くの人の心を動かす理由を思い知る。
昨年はコロナ禍でまだかなわなかったコール&レスポンス。『愛がなくちゃ』ではついにそれが実現し、花道を歩きながら愛しそうに方々に目線を送りマイクを向けたトータス松本。続いては彼がドラムを叩き、サンコンJr.が歌唱する『コミコミ』~ヒューイ・"ピアノ"・スミスの『Don't You Just Know It』のマッシュアップへ。オールディーズな衣装が映えるダンサーを交えサンコンJr.がセンターを張るシーンには、「故郷に錦を飾りました!(笑) サンコンショー、いかがだったでしょうか?」とトータス松本も大ウケ。「まさかハンドマイクで歌うなんて思ってなかったけど、長く続けてみるもんです(笑)。31年目のウルフルズもよろしくお願いします!」とはサンコンJr.。
終盤は、メンバーはもちろんサポートも含めた全員のソロパートでも存分に魅了した、ファンキー&ソウルフルな最新アルバム収録曲『続けるズのテーマ』を皮切りに怒濤の展開! 『ウルフルズ A・A・Pのテーマ』では、トータス松本がためにため、焦らしに焦らして歌い、リアクションの声が上がる光景が完全復活。おなじみの振りつけもバッチリキマって、"本当にライブって楽しい!"と細胞レベルで騒ぎ出すこの感覚がうれしい。お次はまたもや最強のアンセム『バカサバイバー』となれば、当然のごとくブチ上がるわけで...どれだけキラーチューンを放っても名曲/代表曲が後に控える層の厚い楽曲群に心地良く圧倒されながら、トドメは『ええねん』ってもうどんだけー!(笑) 今日一日ですっかり日焼けしたトータス松本が熱唱する中、何万本という拳が突き上がる。
「『ヤッサ!』を始めた頃って、今みたいにフェスってなかったと思うんですよ。でも、一つのバンド単独でこれだけのことをやらせてもらえてるのは、すごく珍しいと思う。とにかくこれからも力尽きるまで毎年やりたい。いつも集まってくれて本当にありがとう。老若男女めっちゃ混ざってる。こんなのなかなかないと思います。うれしいです。じゃあ、最後の曲やりますか!」というトータス松本の呼び掛けに、即座に反応する"えー!"の声。「そんなん言ってもね、分かってるくせに(笑)。暫定的に最後の曲を(笑)」とトータス松本がいざない、ラストはこれまた名曲『いい女』。理屈抜きに泣けて笑えて、心が温かくなる。ウルフルズのライブでしか、『ヤッサ!』でしか味わえないものが絶対にあって、曲間の「来年もやりたいな~来てくれるか!?」というトータス松本の一声には、大歓声が巻き起こる。ジョンB主導の元、一度は舞台をはけたトータス松本をみんなで呼び戻す予定調和もやっぱり最高!
アンコールでは、もはやサム・クックの日本語カバーの域を優に超えたウルフルズ風味の『ワンダフル・ワールド』を。日が少しずつ傾き、そよぐ風もひんやり心地良いもみじ川芝生広場に、切ない歌声がじんわり染み渡っていく...。からの一転、『ツギハギブギウギ』では再び見る者のハートに火をつけ、ド派手な照明とホーンで高ぶる絶景を創出! とは言え、"まだあの曲を聴いてない"と言わんばかりにダブルアンコールを求める拍手が鳴りやまない。
サンコンJr.の印象的なビートが鳴り響けば、答えは一つ。殿様姿のトータス松本がせり出しから浮上し、幕開けのギターリフから『ガッツだぜ!!』に突入! なぜか途中で死んでしまう殿様を拍手で生き返らせるお約束はもちろん、ギターやかぶとの先から噴射する回転花火や炎の特効でも魅せ、今年の『ヤッサ!』はエンディングへ。「ありがとう! 久しぶりにみんなで手つなぐわ」と、コロナ禍をサヴァイブした仲間たちで最後のあいさつをした瞬間、大空には大量の打ち上げ花火が! 年に一度、『ヤッサ!』がある。この場所で会える。そんな素晴らしい人生の約束がまた、来年に向けて動き出した。
Text by 奥"ボウイ"昌史
Photo by 渡邉一生(SLOT PHOTOGRAPHIC)/オイケカオリ/ヤマウチマイ
出展:
ぴあ関西版WEB
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Setlist
01 バンザイ~好きでよかった~
02 大阪ストラット
03 明日があるさ
04 SUN SUN SUN'95
05 ツーベーコーベー
06 アイズ
07 グッゴー!
08 Yahoo!~黒田の子守唄
09 僕の人生の今は何章目ぐらいだろう
10 ゾウはネズミ色
11 それが答えだ!
12 楽しいお仕事愛好会
13 センチメンタルフィーバー ~あなたが好きだから~
14 事件だッ!
15 ひとつふたつ
16 笑えれば
17 愛がなくちゃ
18 コミコミ
19 続けるズのテーマ
20 ウルフルズ A・A・Pのテーマ
21 バカサバイバー
22 ええねん
23 いい女
ENCORE
24 ワンダフル・ワールド
25 ツギハギブギウギ
26 ガッツだぜ!!