「始まるのが待ち遠しいし、始まったら終わりたくない」
ウルフルズが贈る年に一度のお祭り騒ぎ!
5/25(土)大阪・万博記念公園もみじ川芝生広場
『ヤッサ!2024』ライブレポート


'00年より始まった、ウルフルズの恒例の野外ワンマンライブ『ヤッサ!』。通算19回目となった今年は、『スマドリでええねん!PRESENTS OSAKAウルフルカーニバル ウルフルズがやって来る! ヤッサ!2024 エンヤコラ ヤッサッサのサ!!! everything's gonna be alright』と題し、5月25日(土)大阪・万博記念公園もみじ川芝生広場にて開催された。ライブ中、楽曲が生まれた当時の心境や、今歌って改めて気付く思いを何度も口にし、「『ヤッサ!』で歌うのが何か好きなんですよね」とトータス松本(vo,g & harp)が言うように、『ヤッサ!』で聴きたい曲がある。全24曲、約3時間半にわたる『ヤッサ!2024』ライブレポート。ファンとの絆を確かめ合うような年に一度のお祭り騒ぎが、来年も、5年後も、10年後も、続きますように――。



コロナ禍を経て、4年ぶりに『ヤッサ!』が復活した'22年から、3年連続の晴天。そう、神様だって『ヤッサ!』が見たいに違いない(笑)。文句なしの野外ライブ日和に、今年も開演を知らせる『世界の国からこんにちは』が万博記念公園もみじ川芝生広場に鳴り響く。が、SEに合わせて大きな手拍子が巻き起こるものの、一向にメンバーの姿は見当たらない...。"どこだどこだ?"とざわめき始めた観衆がはたと気付いたときには、ウルフルズ御一行が客席をかき分け入場という思わぬサプライズ! これには冒頭から場内も大興奮で、頼もしいサポート陣がいち早く舞台へと上がりセッティングを済ませていく。



そして、浦清英(key)が奏でるスペーシーなシンセと、真心ブラザーズの桜井秀俊(g)×菅原龍平(g)の粘り気のあるツインリードギターが導いた、満を持してのオープニングナンバーは『事件だッ!』だ。この幕開けだけですでに鳥肌モノだが、いざパフォーマンスが始まればその熱気はあっという間に何倍も上乗せ。初っぱなから総立ちの絶景を前に、純白のナポレオンスーツを身にまとったトータス松本が熱唱すれば、武嶋聡(sax)、村上基(tp)、滝本尚史(tb)からなるヤッサホーンズの音色が彩った『SUN SUN SUN '95』では、早くも真夏と化した『ヤッサ!』を総勢40名のダンサーもろとも華やかに盛り上げる。



「今日はすごいね、ホントによく晴れて...みんなのおかげやと思うわ、どうもありがとう! 年に一回きりの『ヤッサ!』、ウルフルズのお祭りです。存分に楽しんで帰ってください、よろしく!」(トータス松本)とあいさつ後はソウルフルに『愛がなくちゃ』を歌い上げ、「トータス松本!」とコールするだけで即かんでしまう、ジョンB (b & cho)が場を和ませる(笑)。



その後も、「『ヤッサ!』で歌うのが何か好きなんですよね」とトータス松本が述べ、万博記念公園にそよぐ爽やかな風とメロディに肩が揺れた『きみだけを』、コール&レスポンスでもグッドヴァイブを生み出した『いつも元気 (GOOD TIMES)』と続け、トータス松本がビザールギターを弾きまくる『ワルツ!』では、サンコンJr.(ds & cho)の躍動感のあるビートでもぐんぐんギアを上げていく!



ここで、トータス松本がいきなりドラムを叩き出すと、風船を片手にサンコンJr.がいつの間にか花道へ! ハンドマイクで『コミコミ』を歌ったかと思えば、季節外れのトレンチコートに着替えたジョンBが、バラの花を抱えジョンB & ザ・ドーナッツ!の楽曲『所在ない』を披露。時折「ジュテーム...」とつぶやき、その様子を生温かい目で見守るオーディエンスにバラを渡していく(笑)。「以上、バラエティコーナーでした!」と告げるトータス松本に心の中で首がもげるほどうなずきながら(笑)、いよいよ前半戦もクライマックスへ。



大きなセットを埋め尽くすほど大所帯のヤッサダンサーズと届けた『それが答えだ!』は圧巻で、「答えがなくてもとりあえず前へ行けば、何か見つかるんちゃうの? 今でもそんな気がします。みんなのおかげでフレッシュな気分で歌えた、演奏もフレッシュやった」とトータス松本も満足げ。サンコンJr.も、「今年で19回目の『ヤッサ!』ですけど、雨のことを心配しなかったのは初めてではなかろうかと。そういうところも運があるのかなと思ったりして。今日は今までで一番幅の広い『ヤッサ!』になると思う。最後まで楽しんで帰ってください!」と続ける。"街の働く人たち"がコンセプトというそれぞれの衣装にも触れ、「年に一回なんで始まるのが待ち遠しいし、始まったら終わりたくない。ホンマ心から礼を言うわ。楽しんでいってください、それだけ」とトータス松本。



そこにいる全ての人が共感したであろうMCを受けて、みんなで手を上げ合唱した感動の『バンザイ~好きでよかった~』から、『サンキュー・フォー・ザ・ミュージック』の狂騒になだれ込み、充実の前半戦を締めくくった。



インターバルではウルフルズ自らグッズ紹介をするVTRが流れ、和気あいあいの雰囲気の中、センターステージにサンコンJr.とヤッサホーンズが再登場。和太鼓と管楽器だけで『ステキだね』を演奏し、お祭りムードを演出する。そこに続々と残りの演者が集い、お次は360°フォーメーションで『明日があるさ』を。浦のアコーディオンの音色がハマッたピースフルなアレンジで、着物姿のヤッサダンサーズをバックにクラップが沸き立つ景色もアットホームでたまらない。やはりウルフルズのライブは、『ヤッサ!』は、つかの間の非日常という幸福をくれるとしみじみ。続く『すっとばす』も和アコースティックなレアバージョンで聴かせ、各々が再びメインステージの定位置へ。



バンドの長い歴史の中からの選び抜かれた『ヤッサ!』のセットリストだけあって、幾度となく曲を書いたあの頃を思い起こし、感慨深げなトータス松本がこう語る。 「昔は生意気なことを歌ってたんよ。でも、年を取っても同じやな、やみくもにもがきながら歌っていくんやなと思うと、曲が愛おしくなってくる。最近ね...年のせいかもしれんけど、何かとかみ締めるのよ! こないだ配信になった初年度の『ヤッサ!』のライブ音源も、最初は恥ずかしくてよう聴かんかった。ただね、聴いてみたら結構良かった。一生懸命というか、熱いものがちゃんとそこにあって。お客さんも今より20歳ぐらい若いから、"キャー!"の周波数がだいぶ高いし(笑)。でも、すごいエモーショナルで、今年の『ヤッサ!』も頑張ろうみたいな感じになったんで。みんな一緒に年を取ってきたな。...って俺はいつまでしゃべるんやろ(笑)。歌います!」  少しずつ日が落ちていく会場にド派手な照明とゴージャスなホーンが映えた『ど真ん中』、「大阪の、大阪による、大阪のための!」と待ってましたの決めぜりふから突入した『大阪ストラット』...目の前の何万という観衆の心をつかんでいつまでも離さない歴代の名曲群には、毎度のことながら感心してしまう。



"ウルフルズの音楽がそばにある人生で良かった"。『暴れだす』の静かな力強さが、じわじわと心と体が満たされていくこの感覚が、そう確信させる。そんな充足感に浸る間もなくハートに火をつけたのは、あのギターのカッティング...! 見渡す限りが拳を突き上げた『ガッツだぜ!!』では、「また今年も結局これ...」とその場に倒れ込むトータス松本を満場の拍手が生き返らせる美しい茶番もきっちりこなし(笑)、炎が噴き出す特効でも魅せたのはトドメの『バカサバイバー』ってもう最高! どんだけアンセムあんねん!!



「来年は、'00年に『ヤッサ!』を始めて25周年の20回目や。その次の年はトータス松本、還暦イヤーです。60歳になって何がやりたいか考えたら、『ヤッサ!』しか思いつかん。東京のどこかで単独ライブをやるより、『ヤッサ!』でみんなが祝ってくれたらええなぁって。その前にまず来年があるけど! ぜひみんなでまた集まって、ここでワーっとやりたいなぁ。何回も言うけど、今日はホンマにありがとう。作ったときにちょっとキュンとした曲を歌わせてください。"まだまだ俺は行くで!"っていう歌を」(トータス松本)

 ささやかな日々の幸せをつづる人生賛歌『生きてく』に酔いしれた後、「これも好きな人がいっぱいいてくれて...みんなが育ててくれた曲やと思う。一緒に歌おう!」とトータス松本が呼び掛けたのは、不朽の名曲『笑えれば』だ。あの頃も、今も、人生に優しく寄り添うメッセージ。今年もまた、『ヤッサ!』で聴くこの曲に生かされる...。



「どうもありがとう大阪! 最後の曲です。景気良くパーっといくから、みんなも跳ねたり飛んだり歌ったり好きにしてください!」(トータス松本)と、ラストチューンは何もかも忘れて底抜けに楽しい『ええねん』! 有言実行の3分半が、エンディングにふさわしいハッピーな空間をもみじ川芝生広場に作り出した。



「今回の『ヤッサ!』のテーマ曲をまだやってなかった!」(トータス松本)と、アンコールでは、この日に向けて振り付けレクチャー動画をYouTubeに公開するなど着々と準備してきた新曲『ヤッサ!コレカラ音頭』を。今年に限らず今後の『ヤッサ!』の定番にもなりそうな一曲が、合いの手とともに大空に広がっていく。



最後の最後は、焦らしに焦らすお約束のフェイクも合言葉もバッチリ決まった『ウルフルズ A・A・Pのテーマ』! トータス松本が生声で「ありがとう~!」と代表して感謝を告げ、この日の出演者が総出で手をつなぎ頭を下げる。'25年は『ヤッサ!』25周年×20回目のダブルアニバーサリー。今年の余韻と来年への期待を胸に家路へと向かう人々を、盛大な打ち上げ花火と「また見てねー! ウルフルズでした、また来年会おうぜ!!」(トータス松本)との言葉が見送った万感のフィナーレとなった。







Text by 奥"ボウイ"昌史
Photo by 渡邉一生(SLOT PHOTOGRAPHIC)/松本いづみ

出展:ぴあ関西版WEB

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Setlist
01. 事件だッ!
02. SUN SUN SUN '95
03. 愛がなくちゃ
04. きみだけを
05. いつも元気 (GOOD TIMES)
06. ワルツ!
07. コミコミ
08. 所在ない
09. それが答えだ!
10. バンザイ~好きでよかった~
11. サンキュー・フォー・ザ・ミュージック

12. ステキだね
13. 明日があるさ
14. すっとばす
15. ど真ん中
16. 大阪ストラット
17. 暴れだす
18. ガッツだぜ!!
19. バカサバイバー
20. 生きてく
21. 笑えれば
22. ええねん

~ENCORE~
23. ヤッサ!コレカラ音頭
24. ウルフルズ A・A・Pのテーマ